Allegro Common Lisp 2006 November Seminar (Japanese)。忘れないうちに3日間の印象を殴り書き。
Lispそのものに興味がある人たちと、むしろSemantic Technologyに興味がある人たちがいて、双方にとって有益なセミナーだったと思う。Franz Inc.と数理システムの皆さんには本当に感謝いたします。
いちばん興味深かったのは、Fritz(Franzの創業者)がGoogleに代表されるSyntacticな検索を明確に否定していたこと。非常に慎重な人なので、Googleのビジネスに対して不快感をあらわにしているのが意外だった。
そしてやっぱりAllegroGraphのすごさが印象的。というか、それを開発しているJansのパワーがすごい(懇親会では手羽餃子の油を背広に跳ね飛ばしてしまった。あらためてごめんなさい)。いくら理念的にSemantic Technologiesに利があるといっても、やっぱりRDFトリプルとして記述されたメタデータに対する操作を大規模なアプリケーションにまでスケールさせるのは困難なわけで、そのへんが軽量なスクリプト言語とXMLベースのWeb 2.0が成長した理由のひとつだろう。そういう事情をひっくり返してSemantic TechnologiesをWeb 3.0(そんなものがあるとして)の支柱にする鍵のひとつになりうるのかもしれない。まあ、そんな大仰なことを言わなくても、ふつうにRDBMSよりグラフのほうが直感的なデータベースは多いような気がする。実際、いままさに頭を悩ませている問題として、出版した書籍と著者や訳者とを管理できるようなデータベースがほしい。そんな出版社向けの汎用データベースをAllegroGraphで作るという夢を見た(著者と書籍の間に単純ではない関係があったりするので、ふつうの住所録を作るよりいくぶんたいへん)。
もうひとつの鍵はプレイヤーの数だと思うんだけど、これはちょっと悲観的にならざるをえない。Web 2.0でやっているのはSyntacticなデータから豊饒なWebアプリケーションを大人数でマッシュアップ(これって音楽業界のマーケティング用語じゃなかったの?)すること。Lispベースの技術でそれだけのジャンクなマンパワーを集められるかっていったら、たぶんできない。Lisp以外で同じことが実現できるようになるかっていたら、たぶんすぐにはできない。
でも、それでいいのかも。Fritzの不快感は「なんでもGoogle」という外野の風潮に対するものであって、それで満足する人はそれでいいけど不足があるならぜひ相談してくれ、という話だったんだと思う(かなりバイアスぎみ)。すでにSyntacticなキーワード検索というアプローチの限界が露呈している分野(バイオとIntelligence Agencies)はSemantic Technologiesに目を向けているし、ある程度大規模な組織の内部に閉じたアプリケーションなんかもSemantic Technologiesに目を向ける潜在的な市場になるとふんでいるらしい。まさに昨年のセミナーでは「Lispでなければ解決困難なほど複雑な問題も世の中にはたくさんある」と強調していたけど、その方法論をSemantic Technologiesに絞ってきたんだなあ、という印象だった。
なによりもFranz社は、Lispをビジネスとして成立させることに興味があって頼もしい。Fritzは2日目のパネルディスカッションで、Franz社が最後のLisp企業だと強く自覚しているように見えたけど、それにはすべての聴衆が素朴に好感を持ったと思う。Semantic! Semantic! っていっても、それはやっぱりビジネスマンとしての売り文句で、純粋に美しいテクノロジーが好きなんだろうなあ。
以下はどうでもいい話。
やっぱり懇親会ではSchemerの肩身が狭い。自分のようなTiny Schemerだとなおさら。でも楽しいのはなんでだろう。
いいかげんな英語でもいいから、話をしないとダメだ。
CLOSを勉強しないとダメだ。小出先生の発表で、「CLOS/MOPがメタ-メタ-…-オブジェクトを云々するのはラッセルのパラドクスにつながるから論理屋には絶対に理解できない」みたいな軽口があったけど、あれはどういう話だったんだろう? それって単純に巨大基数に対応してるんと違う?
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