キーボードは Happy Hacking Keybord Lite(2じゃないほう)と決めて、はや数年。4台をあちらこちらで使ってるけど、最近になって欠点が判明した。とくに前期に生産されたものに顕著なんだけど、本体が反りやすい。おかげで、打鍵のたびに微妙にカタカタいう。足が一本だけ短いテーブルの上で文字を書いているときと同じイライラ感。原因は、きっと背面の硬質プラスチック成型の難だろう。あらためて見るとタイ製と書いてある。
むかし、プラスチック製品の製造にかかわったことがある。実は、プラスチックの射出成型は想像するほど簡単じゃない。つまり、機械まかせにしてポコポコと安易に量産できるようなものじゃない。気温や湿度が変わるだけでも射出時の圧力や温度を調整しなければならない。しかも、プラスチックの成型可能な温度には下限も上限もあるから、この調整が製品の質を左右する職人技になる。さらに職人になると、コンディションに応じて材料や可塑剤の配合まで(同じ商品を作るときでも)変えてくる。
プラスチック成型職人の職人たる所以は、実際の成型段階での技にとどまらない。よく考えれば当然だけど、金型の設計段階から彼らの技が効いてくる。まず、そもそもプラスチックをうまく流せるように金型を作る必要がある。プラスチックは金型へと射出した瞬間に冷えて流れにくくなるから、可能な金型の形状は自然と限られる。また、金型から取り出した製品は冷えて縮まるため、金型本体は出来上がり寸法より微妙に大きく作らなければならない。縮み率は材料によってずいぶん違う。完成品の外見に対する配慮も必要だ。材料の流し込み口はどうしても最後にランナーとして残ってしまうため、どこから材料を射出すれば製品の目立たない位置にランナーをもってこられるかも考慮する。透明なパーツともなれば、一切のムラも許されない。そのために金型の成型面へメッキを施すこともある。
そこで、プラスチックの性質を知りぬいた技師の意見を取り入れて金型職人が金型を彫り、それで試しに成型してみて、部分的に削りなおしたり肉盛りしたりしながら金型を調整する。だから、CADで設計したものを自動旋盤で彫るだけじゃまっとうな金型はできない。
自分がプラスチック成型にかかわったのは国内の射出製造業者と金型業者だった。そして、彼らの職人技は、一言でいうとすごかった。びっくりした。これぞプロフェッショナル。しかも気負わない。
はて、何がいいたかったんだろう。
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