具体的には、「本文のゴシックはヒラギノ基本書体の角ゴW3でいいんだけど、強調したいところで角ゴW4を使いたい。ヒラギノ角ゴW4は買ってきた。原稿で
\hirakakufour{モナド}
って使いたい!」という状況がままあって、場当たり的な試行錯誤で「とりあえず」期待どおりの結果は得られているが、なにぶん試行錯誤でたどりついた方法なので正解かどうかはわかりません、つっこみ求む、という話。TeXにおけるフォントとは何か、を整理する必要があるので、肝心の手順にいたるまでの説明が長くなります。まずは基礎知識。
- 買ってきたフォントの実体は .otf ファイルだけど、TeXが必要としているのは .tfm というファイルである。(.vf ファイルもあるけど、ややこしいので省略)
- TeXのソースで指定するのは、あくまでも .tfm ファイルの名前である。.tfm ファイルには、TeXがそのフォントの文字を配置するときの幅とか前後の文字とのアキといった数値情報(メトリック)だけが入っている。これはバイナリファイルで、極端にいうとフォントの実体とぜんぜん関係ない値であっても、とにかく数値情報が決まったフォーマットでエンコードされていればいい。TeX のコマンド(
platex
とか)にとっては、フォントの実体なんて知ったことじゃないのである。TeX の仕事は、各ページへの要素の配置を決めるアルゴリズムを駆使して、その結果を dvi ファイルとして埋め込むだけ。それにはフォントのグリフを並べるのに必要な数値情報だけ知っていればいい。(この「なんでも数値にしてアルゴリズムさえ考え抜けばいいじゃん」という方針をクヌーシズムと称したい。) - TeX は、「この要素には○○というフォントを使って!」という情報だけをdviファイルに書き出す。
- ○○は、この場合は .tmf ファイルの名前。
- フォントの実体は、dviファイルを解釈するDVIウェアと呼ばれるソフトウェアが扱う。
- dvipdfmx や dviout といったDVIウェアが、フォントの実体である .otf ファイルを扱うので、彼らに .tfm ファイルと .otf ファイルとの対応付けを教えなければならない。
次に、ここでまとめる手順の前提条件。
- OTFパッケージを導入ずみ
- OpenTypeのヒラギノ角ゴシック体 W4の実体を HiraKaku-W4.otf という名前で持っている
- DVIウェアは dvipdfmx
ようやく手順。
- 何はともあれヒラギノ角ゴW4用の .tfm ファイルが必要。ここが肝要なんだろうけど、まあ角ゴW4のメトリックは角ゴW3とそんなにかわらないはずだよね、と仮定して、齋藤さんのOTFパッケージの nmlgothb-h.tfm および nmlgothb-h.tfm をそっくりコピーして使わせていただく。このへんが「とりあえず」なゆえん。(もしかするとヒラギノ角ゴW8用の tfm のほうが適切かも。)
$ cd (TEXMF)/fonts/tfm/ptex/otf/otf # パスとコピー先は各自でてきとうに
(本来は、メトリックをS式っぽいもので記述したPLファイルというのを作って、それをpltotfというツールで変換してtfmファイルを作るらしいが、自分でやったことはない。OTFパッケージのうれしさは、ヒラギノ基本6書体に対してこれらをすべてお膳立てしてくれることにある。)
$ cp nmlgothb-h.tfm nmlgothlb-h.tfm
$ cp nmlgothb-v.tfm nmlgothlb-v.tfm - dvipdfmxに、.tfm ファイルと .otf ファイルの対応付けを教える。これは、次のような map ファイルを書いて、dvipdfmx の実行時に
-f
オプションで指定すればよい。$ cat hirakakufour.map
nmlgothlb-h H HiraKaku-W4.otf
nmlgothlb-v V HiraKaku-W4.otf - フォントの実体 HiraKaku-W4.otf を、dvipdfmx から見える場所(
/usr/share/texmf/dvipdfmx/fonts/
とか)におく。
これで、たとえばこんな風にすれば、ヒラギノ角ゴW4を
\hirakakufour
コマンドで使えるようになる。\DeclareFontShape{JY1}{gt}{lb}{n}{<-> nmlgothlb-h}{}
\DeclareFontShape{JT1}{gt}{lb}{n}{<-> nmlgothlb-v}{}
\def\hirakakufour#1{%
{\usefont{JY1}{gt}{lb}{n}#1}}
2 件のコメント:
OTFパッケージのサイトからソースをダウンロードして,
展開して出来たディレクトリで,
pltotf basepl/base-h.pl nmlgothlb-h.tfm
pltotf basepl/base-v.pl nmlgothlb-v.tfm
./mkjvf nmlgothlb-h hgothlb-h
./mkjvf -cm -cp nmlgothlb-v hgothlb-v
とすると
nmlgothlb-(h,v).tfm, nmlgothlb-(h,v).vf, hgothlb-(h,v).tfm
の計6ファイルが出来ます.それぞれを適切な場所に移動し,
dvipdfmxのmapファイルに
hgothlb-h H HiraKaku-W4.otf
hgothlb-v V HiraKaku-W4.otf
の2エントリを追加します.
スタイルファイルに
\DeclareFontShape{JY1}{hgt}{lb}{n}{<-> s * [\utf@sc@le] nmlgothlb-h}{}
\DeclareFontShape{JT1}{hgt}{lb}{n}{<-> s * [\utf@sc@le] nmlgothlb-v}{}
\def\lbdefault{lb}
\DeclareRobustCommand\lbseries
{\not@math@alphabet\lbseries\relax
\kanjiseries\lbdefault\selectfont}
\def\hirakakufour#1{{\gtfamily\lbseries #1}}
を追加します.
因みにですが,全角か半角しかないので,ヒラギノ角ゴW4の和文のメトリックはヒラギノ角ゴW3と全く同じです.
正解、ありがとうございます。
dvipdfmx では makejfm したものを使うべきなんですね。
スタイルファイルもそのまま使わせていただきます。
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