2010/03/26

稼働中のマシンのHDDから、VMware Player用の仮想マシンを作る

稼働中の物理マシンの HDD を、そっくり仮想イメージに変換して、 VMware Player で再生できるようにしたい。手順としてはこれだけなんだけど……
  1. 対象の HDD をダンプする(partimage を使う)
  2. VMware 用の仮想ディスクを空っぽの状態で作る(QEMU を使う)
  3. 2.の空っぽ仮想ディスクに領域を作る(fdisk を使う)
  4. 1.のダンプを、3.の領域へとリストアする(partimage を使う)
それなりに広大な作業スペースが必要だし、個々の作業に時間がかかるので(待ち時間にこんな記事がかけるくらい)、次回以降はできるだけ要領よく済ませたい。だから自分用にメモ。もちろん無保証です。

用意するもの。
  • 作業場
    ここでは Windows マシンを使う。対象の HDD 上で動いてなくて、VMware と QEMU が使えて、でかいディスク容量があるマシンなら、何でもいいと思う。

  • 起動環境
    ここでは Knoppix の iso イメージを使う。VMware 用の仮想イメージ以外で、fdisk と partimage が使える環境を VMware Player から起動できるものなら、何でもいいと思う。

  • QEMU
    空っぽの仮想ディスクを作るのに使う。ここでは QEMU on Windows の qemu-img コマンドを使う。


実際の作業の流れ。
  1. partimage で対象の HDD をダンプして、作業場からファイルとして見える場所にイメージファイル(群)として保管する。

  2. Windows のコマンドプロンプトで、qemu-img コマンドを使って空っぽの VMware 用仮想ディスクを作る。対象の HDD と同じサイズで vmdk 形式にする。対象が 120Gバイトならこんな具合。
    > qemu-img create -f vmdk hokansaki.vmdk 120G
    これでhokansaki.vmdkという仮想ディスクができる。

  3. 空っぽの仮想ディスクをフォーマットしたいのだけど、空っぽなので、当然のことながら VMware Player で仮想マシンを起動することができない。そこで、何かしら起動環境が必要になる。空っぽの物理ディスクに OS をインストールするときと同じ理屈ですね。つまり、BIOSチップ を CD/DVDブートにするのと同じ要領で、VMware Player の BIOS を CD/DVD ブートに設定し、ROM ドライブに Knoppix のディスクを入れて Player を再起動すればいい。VMware Player の起動時に F2 を押せば BIOS 画面に入れる。
    ただ、せっかく仮想マシンなんだから、わざわざ物理的な起動ディスクを使う必要もない。作業場の HDD 上に Knoppix の iso を置いておいて、それを Player の起動時に読むようにしたほうが手っ取り早いというもの。つまり、こんな vmx ファイルで仮想マシンを読み込めばいい。(この例では Windows の Fドライブ以下に Knoppix 5.1.1 の iso が置いてある。guestOS の一覧はこのへんを参考に。ide1 の deviceType を cdrom-image としているため、この場合も BIOS で CD/DVD ブートに設定する必要あり)
    .encoding                = "Shift_JIS"
    config.version = "8"
    virtualHW.version = "4"
    memsize = "512"

    ide0:0.present = "TRUE"
    ide0:0.fileName = "hokansaki.vmdk"
    ide0:0.mode = "persistent"
    ide0:0.deviceType = "disk"

    ide1:0.present = "TRUE"
    ide1:0.fileName = "F:\knoppix-iso\KNX5.1.1J_AC.200.iso"
    ide1:0.deviceType = "cdrom-image"

    ethernet0.present = "TRUE"
    ethernet0.connectionType = "nat"

    usb.present = "TRUE"

    displayName = "hokan saki"
    guestOS = "other26xlinux"
    nvram = "hokansaki.nvram"
    この構成で仮想マシンを起動する前に、仮想マシンから作業場(具体的には、ダンプしたイメージファイルの置き場所)が見えるようにする設定を忘れずに。VMware Player のバージョン3 には、「仮想マシン設定の編集」という GUI が用意されているので、そこから作業場のハードディスクを追加するだけだった。

  4. 空っぽの仮想ディスクを fdisk でフォーマット。上記の構成なら、くだんの空っぽの仮想ディスクは /dev/hda として認識されているはずなので、
    $ sudo fdisk /dev/hda
  5. partimage で、ダンプした対象 HDD のイメージファイルを /dev/hda1 にリストア。partimage を実行する前に、対象 HDD のイメージファイルの置き場所をマウントしておくこと。イーサネットだと、たぶんすごい時間がかかる。ついててよかった eSATA。

  6. ブートローダの修復。GRUB ならこんな感じ。
    $ sudo mount /dev/hda1 /media/hda1
    $ sudo chroot /media/hda1
    $ grub-install /dev/hda
    (マウントのときは Knoppix の UI を使わず、コンソールから mount コマンドで実行すること(Knoppix についてくる /etc/fstab の設定のせいで読み取り専用になってしまうため)
    あと、fdiskで領域(この場合は/dev/hda)をブート可能に設定しておくこと。

  7. BIOS の CD/DVD ブートを解除すれば、物理マシンで稼動していたシステムがそっくり VMware Player 上で起動するようになるはず。

2010/03/22

TeXでFizzBuzz

shibuya.lisp の テクニカルトーク#5 で、はやみずさんが「LaTeXでFizzBuzzを書く気になるか?」的な話を一瞬されたので反応しておく。そう言われて始めて書いてみようかと思うくらいだから、「書く気になるか?」という問いに対する答えは否定的なものであっていると思う。
\newcount\a \newcount\b \newcount\c
\newcount\n \newcount\i
\newif\ifdivisable

\def\fizzbuzz#1{%
\n=#1 \i=1
\loop \ifnum\i<\n
\printffizzbuzz
\advance \i by 1
\repeat}

\def\printffizzbuzz{%
\testdivisable{\i}{15} \ifdivisable fizzbuzz\par \fi
\testdivisable{\i}{3} \ifdivisable fizz\par \fi
\testdivisable{\i}{5} \ifdivisable buzz\par \fi
\ifdivisable\else \number \i\par \fi}

\def\printffizzbuzz{%
\testdivisable{\i}{15} \ifdivisable fizzbuzz \else
\testdivisable{\i}{3} \ifdivisable fizz \else
\testdivisable{\i}{5} \ifdivisable buzz \else
\number \i \fi\fi\fi \par}

\def\testdivisable#1#2{%
\a=#1 \b=#2 \c=#1
\divide \a by \b
\multiply \a by \b
\advance \c by -\a
\ifnum\c=0 \divisabletrue \else \divisablefalse \fi}

\fizzbuzz{30}

\vfill
\eject
\end
(2010.3.23 rudolphさんの指摘を受けて\printffizzbuzzを修正)

LaTeXじゃなくて素のTeX。これを fizzbuzz.tex のような名前で保存して tex fizzbuzz と実行すれば dvi ができる。

整数の計算には、\newcountコマンドでグローバルなレジスタをいくつか用意して、これを使う。これは文字通りのレジスタ計算で、レジスタに入っている値をadvancedivideといったコマンドを使って書き換えながら計算を進めていく。

リストやシーケンスのような気が利いたデータ構造は当然存在しないので、ループを使ってFizzBuzzするしかない。素のTeXでは、\loop... \repeatという構文が用意されていて、これでループが書ける。

あとトリッキーなのは、\newifというマクロを使って\ifdivisableという特定用途のための条件文を用意するところだろう。まあ、なんていうか、このへんはイディオムなので深く考えない。最初に見るとぎょっとするし、もっとうまい記述方法がないか考えても見るけど、結局こういうイディオムを使って書くのがいちばんしっくりくることに気がつくものだ。

2010/03/04

pLaTeX+dvipdfmxで基本じゃないOTFフォントを使う

ヨドバシカメラのソフト売り場で大枚はたいてOTFフォントを買ったならば、とりあえずpLaTeXでも気軽に使いたい、それもWordくらい気軽に、という話。

具体的には、「本文のゴシックはヒラギノ基本書体の角ゴW3でいいんだけど、強調したいところで角ゴW4を使いたい。ヒラギノ角ゴW4は買ってきた。原稿で\hirakakufour{モナド}って使いたい!」という状況がままあって、場当たり的な試行錯誤で「とりあえず」期待どおりの結果は得られているが、なにぶん試行錯誤でたどりついた方法なので正解かどうかはわかりません、つっこみ求む、という話。

TeXにおけるフォントとは何か、を整理する必要があるので、肝心の手順にいたるまでの説明が長くなります。まずは基礎知識。
買ってきたフォントの実体は .otf ファイルだけど、TeXが必要としているのは .tfm というファイルである。(.vf ファイルもあるけど、ややこしいので省略)
TeXのソースで指定するのは、あくまでも .tfm ファイルの名前である。.tfm ファイルには、TeXがそのフォントの文字を配置するときの幅とか前後の文字とのアキといった数値情報(メトリック)だけが入っている。これはバイナリファイルで、極端にいうとフォントの実体とぜんぜん関係ない値であっても、とにかく数値情報が決まったフォーマットでエンコードされていればいい。TeX のコマンド(platex とか)にとっては、フォントの実体なんて知ったことじゃないのである。TeX の仕事は、各ページへの要素の配置を決めるアルゴリズムを駆使して、その結果を dvi ファイルとして埋め込むだけ。それにはフォントのグリフを並べるのに必要な数値情報だけ知っていればいい。(この「なんでも数値にしてアルゴリズムさえ考え抜けばいいじゃん」という方針をクヌーシズムと称したい。)
TeX は、「この要素には○○というフォントを使って!」という情報だけをdviファイルに書き出す。
○○は、この場合は .tmf ファイルの名前。
フォントの実体は、dviファイルを解釈するDVIウェアと呼ばれるソフトウェアが扱う。
dvipdfmx や dviout といったDVIウェアが、フォントの実体である .otf ファイルを扱うので、彼らに .tfm ファイルと .otf ファイルとの対応付けを教えなければならない。

次に、ここでまとめる手順の前提条件。
ようやく手順。
  1. 何はともあれヒラギノ角ゴW4用の .tfm ファイルが必要。ここが肝要なんだろうけど、まあ角ゴW4のメトリックは角ゴW3とそんなにかわらないはずだよね、と仮定して、齋藤さんのOTFパッケージの nmlgothb-h.tfm および nmlgothb-h.tfm をそっくりコピーして使わせていただく。このへんが「とりあえず」なゆえん。(もしかするとヒラギノ角ゴW8用の tfm のほうが適切かも。)
    $ cd (TEXMF)/fonts/tfm/ptex/otf/otf  # パスとコピー先は各自でてきとうに
    $ cp nmlgothb-h.tfm nmlgothlb-h.tfm
    $ cp nmlgothb-v.tfm nmlgothlb-v.tfm
    (本来は、メトリックをS式っぽいもので記述したPLファイルというのを作って、それをpltotfというツールで変換してtfmファイルを作るらしいが、自分でやったことはない。OTFパッケージのうれしさは、ヒラギノ基本6書体に対してこれらをすべてお膳立てしてくれることにある。)
  2. dvipdfmxに、.tfm ファイルと .otf ファイルの対応付けを教える。これは、次のような map ファイルを書いて、dvipdfmx の実行時に -f オプションで指定すればよい。
    $ cat hirakakufour.map
    nmlgothlb-h H HiraKaku-W4.otf
    nmlgothlb-v V HiraKaku-W4.otf
  3. フォントの実体 HiraKaku-W4.otf を、dvipdfmx から見える場所(/usr/share/texmf/dvipdfmx/fonts/ とか)におく。

これで、たとえばこんな風にすれば、ヒラギノ角ゴW4を \hirakakufour コマンドで使えるようになる。
\DeclareFontShape{JY1}{gt}{lb}{n}{<-> nmlgothlb-h}{}
\DeclareFontShape{JT1}{gt}{lb}{n}{<-> nmlgothlb-v}{}
\def\hirakakufour#1{%
{\usefont{JY1}{gt}{lb}{n}#1}}