2009/07/29

DebianでWillcom端末からPPP接続

Debian/GNU Linux(squeeze)に Willcom の PHS 電話端末 AH-J3003S(ウィルコム定額プランで契約)を USB でつなぎ、契約なしで利用できるプロバイダ PRIN にダイアルアップして PPP でインターネットに接続するときのメモ。

まず、避けて通れないプロバイダについて。Willcom 端末からのダイヤルアップ接続には、事前契約が不要な PRIN というプロバイダが使える。使えるんだけど、ずっと料金体系や支払い方法がよくわからず、こわくて使ってなかった。最近になって Windows XP から勇気を出して使ってみたところ、ちょっと外出先で接続するくらいなら気にならない程度の金額だとわかったので、Debianマシンでも使ってみることにした。気になるお値段はPRIN/サービス案内に一覧表がある。Willcom の電話端末を「ウィルコム定額プラン」で契約していれば、「リアルインターネットプラス」を契約していなくても 10円/分 くらい。料金の支払いは、電話料金と一緒に引かれているっぽい(金額が微妙でよくわからないけど、ほかから請求がこないので)。

AH-J3001S という端末は、Linux Kernel からは ACM デバイスとして認識される。cdc-acm モジュールが有効になっていれば、USB ケーブルでつなぐだけで、こんな感じに認識されるはず。
$ tail /var/log/messages
...
... cdc_acm 4-2:1.0: ttyACM0: USB ACM device
... usb 4-2: New USB device found, idVendor=1145, idProduct=0001
... usb 4-2: New USB device strings: Mfr=0, Product=0, SerialNumber=0
...
というわけで、必要な作業は、PPP の設定のみ。

Debian での PPP 接続には ppp パッケージが必要。それと、設定ファイルを編集する pppconfig というユーティリティーを使いたいので、 pppconfig パッケージもインストールする。
$ sudo apt-get install ppp pppconfig
インストールできたら、pppconfig を使って、モデムのデバイスファイルやプロバイダの情報(ダイアルアップ先やユーザ名やパスワードなんか)を設定する。モデムのデバイスは /dev/ACM0 にする。プロバイダがらみの設定値は、PRIN/サービス案内(アクセスポイント一覧がある)やPRIN/各種設定・利用案内(Windows XP のウィザード設定画面の説明がある)とかから探せば見つかる。

pppconfig による設定は /etc/ppp/peers/ および /etc/chatscripts/ 以下にテキストファイルとして保存される。手元の設定結果はこんな感じ。
$ cat /etc/ppp/peers/willcom
# This optionfile was generated by pppconfig 2.3.18.
#
#
hide-password
noauth
connect "/usr/sbin/chat -v -f /etc/chatscripts/willcom"
debug
/dev/ttyACM0
115200
defaultroute
noipdefault
user "prin"

ipparam willcom

usepeerdns
$ cat /etc/chatscripts/willcom
# This chatfile was generated by pppconfig 2.3.18.
# Please do not delete any of the comments. Pppconfig needs them.
#
# ispauth CHAP
# abortstring
ABORT BUSY ABORT 'NO CARRIER' ABORT VOICE ABORT 'NO DIALTONE' ABORT 'NO DIAL TONE' ABORT 'NO ANSWER' ABORT DELAYED
# modeminit
'' ATZ
# ispnumber
OK-AT-OK "ATDT0570570611##61"
# ispconnect
CONNECT \d\c
# prelogin

# ispname
# isppassword
# postlogin

# end of pppconfig stuff
なお、このファイルには書き出されてないけど、プロバイダのパスワードにはユーザ名と同じ prin を設定する(公開情報)。

で、いよいよ接続するには pon コマンドを使う(利用するユーザは dip グループに入っていないといけない)。
$ pon willcom
willcom の部分は、pppconfig による設定の際に指定する設定名。これは /etc/ppp/peers/ なんかの下にあるファイル名でもある。ifconfig してみると ppp0 みたいな名前のインタフェースが新たに現れているはず。切断は poff で。

2009/07/10

LaTeX におけるページをまたいだ囲み記事スタイルのまとめ

追記(2014年11月7日)

いまなら、囲み記事を書きたい場合には tcolorbox パッケージを使うのがよさそうです。 さらに脚注問題については footnoteパッケージというのが 1997 年からありました orz 方法は違うけど、以下の記事でやっている「段落ボックス中の \footnote を外側に追い出す」ができます。 まとめるとこんな書き方をすればよさそう。
\documentclass[a4paper]{article}
\usepackage{lipsum}
\usepackage[most]{tcolorbox}
\usepackage{footnote}
\tcbuselibrary{breakable}
\newtcolorbox{mybox}{breakable, enhanced jigsaw}
\makesavenoteenv[myftnbox]{mybox}

\begin{document}
\lipsum[1]

\begin{myftnbox}
\lipsum[1]

First footnote\footnote{first footnote}.

\lipsum[1-10]

Second footnote\footnote{second footnote}. 
\lipsum[1]
\end{myftnbox}

\lipsum[1]

\end{document}

ただし、tcolorbox に breakable を設定した環境では、minipage でもないのに minipage 専用の独立した脚注番号用のカウンタ mpfootnote が minipage っぽく使われてしまっているため、footnote パッケージはこれを通常の mpfootnote のように外側の脚注番号用カウンタと同期できません。そのため、上記のままでは、myftnbox 環境内だけは脚注番号が毎回 a, b, ... になってしまい、外側の 1, 2, ... と同期できません。ページをまたいだボックス環境で、ドキュメント内で一貫した脚注番号を使うには、何か自分で工夫をするしかなさそうです。

というわけで、以下の本文では、そのための工夫の一例を紹介します。実際に適用してみた結果はこちら


LaTeX でページをまたいだ囲み記事を実現するスタイルはいくつかあって、今のところ回避困難な制限がある。そのまとめ。

基本は framed.sty だろう。角が四角くてもいいなら、これがいちばん素性がいい感じ。ただし、ページをまたぐときに、前のページの末尾と次のページの先頭に罫線が入る。標準的なパッケージなので、いろんな環境で利用できる可能性が高い。たぶん中身をボックスにいれて \vsplit で一行ずつページを構成する垂直ボックスに渡していく方式。

もうひとつ、 eclbkbox.sty というのもある。これはページをまたぐ箇所に罫線が入らない。これもやはり角は四角い。これも \vsplit を使う方式。

同じく \vsplit を使ったページ分割手法で、しかも角丸に対応したスタイルとして、emath の itembkbx.stymultipagebox.sty がある。

さて、以上の4つのパッケージには共通する悩ましい制約条件がある。\footnote がまったく使えない。翻訳なんかだと囲み記事に脚注入れたい場合もあるというのに、いれられない。いろいろ回避策を考えてみたけど、\vsplit を使うにはいったん囲み記事にしたい中身をボックスに入れるしかなく、その時点で \footnote を見るしかなくて、\vsplit するときには手の出しようがない。そもそも \vsplit はインサートの分割アルゴリズムを利用するためのプリミティブだから、やはりインサートである \footnote に対応できなくてもしょうがないか(実際には直接の関係はないけど)。

以下のようにして簡単に \footnote を有効にできる場合がある(全部試してない。使えない環境も多々あるはず)。
\newtoks\mftn
\def\mfootnote#1{%
\footnotemark
\edef\@tempa{\the\mftn\noexpand\footnotetext[\the\c@footnote]}%
\global\mftn\expandafter{\@tempa{#1}}}%
\def\mfootnoteout{%
\the\mftn
\global\mftn{}}

\begin{...}
\let\footnote\mfootnote
...
\end{...}
\mfootnoteout
ただしこの回避策だと、\footnote の項目がページごとではなく最後のページにまとめて出てしまう。まあ、最後の手段ということで。

ページをまたぐ囲み記事で、しかも \footnote に完全対応する方法として、longtable.sty を使って独自の環境をでっちあげるという手がある。(。汎用性がないのでそのままの状態ではたぶん利用不可能。囲み記事の段落を longtable の行に対応させるという荒業のため、段落ごとにしか改ページできない。これが最大の難点。でもまあ、この \longtable を使う方法の難点こそが、\footnote をページごとに出力するための直接の代償でもあるわけだ。)

というわけで、だれか footnote を華麗に再定義して footnoteanyware.sty みたいなのを作ってください。