2007/12/27

ケリー・リンクの『マジック・フォー・ビギナーズ』(柴田元幸訳)。英語の日記によれば11月5日に買ったものらしい。ほとんど2ヵ月かけて読んだわけか。本を読むのが仕事だというのに、この遅読っぷり。いろんな人の日記やブログを読んでいると、すごい勢いで書評やら新刊紹介やらが更新されていて、本当にすごいと思う。僕は今年、何冊本を読んだんだろう(仕事として編集したものは除く)。どうして早く読めないんだろう。何につっかかってるんだろう。

たしかにケリー・リンクの小説には、つっかかるところは多い。不条理さとか荒唐無稽さとか、そういう表面的なところにつっかかるんじゃなくて、お話のせつなさにつっかかってしまう。ぶっちゃけ小説の外面がどんなに奇抜だろうと、もともとそういう要素を求めて彼女の本を読んでいるわけだから、その部分は快感なわけだ。快感すぎるわけだ。だからこそ異化された現実感が巧妙に襲ってきて、せつなくなる。もうね、最後に収録されている「しばしの沈黙」なんて、奥様と離れて生活せざるを得ない状況にある男性に読ませたら、間違いなくきゅんとなるよ。僕もスターライトたんに電話して、悪魔とチアリーダーのお話を語ってほしい! あと、今の自分にとっては、「石の動物」に出てくるヘンリーにも共感を禁じえない。彼に限らず、ケリー・リンクの話に出てくる男性は、みんな斜めった現実に抗わなすぎ。そしてそれは、うちらの日常も一緒なんだろうな。そばにいるのが明らかなゾンビとか悪魔じゃなくて、ゾンビとか悪魔っぽい人間ってだけのことで。

ところでケリー・リンクの翻訳作品には『スペシャリストの帽子』もあるけど、もし彼女の作品を初めて読んでみるってことなら、『マジック・フォー・ビギナーズ』のほうをすすめます。訳文の出来が違う。

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