Paul Graham は「ハッカーと画家」のなかで、熱狂的な没頭と妥協しないことの引き合いにダ・ヴィンチの「ジネブラ・ベンチの肖像」の背景に描かれた松を取り上げていた。今年の5月、実際にナショナルギャラリーで本物を目にすることができたんだけど、なるほど彼の言いたいことはよくわかる。美術史的な価値を頭からとっぱらっても、芸の細かさと力強さが同居している不思議な印象に脳味噌が食らいつかれる感じ。でもなんか「好き」っていう絵でもなかった。描いている本人の技量と作品の凄さはわかるけど、べつに欲しいかっていうとそうでもないなと。食傷する手合いの偏執狂っぷり。
今朝、三の丸尚蔵館が所蔵している伊藤若冲の「動植綵絵」を見てきた。
花鳥−愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>
http://www.kunaicho.go.jp/11/d11-05-06.html
比較するのはおかしい気もするけど、ナショナルギャラリーでダ・ヴィンチを見たときの 23 倍くらい鳥肌が立った。技術が凄いとか描き混みが凄いとか、そういう評価を受け付ける段階はとっくに超越していて、もうなんて言うか、小鳥がかわいい。そんなことしか言えない。まさにクールなアイデアとホットな実装。とにかくクールなアイデアとホットな実装。
ちなみに、上野の東京博物館でもプライスコレクション展として若冲が何点か来日してるけど、若冲に興奮するなら三の丸尚蔵館のほうがいい。タダだし。プライスコレクションのほうは1300円くらい取られる。それでも、若冲の一番有名な作品であるグリッドぞうさんとかが見られるので、こっちはこっちでおすすめ。さらにガラスケースなしで長沢芦雪のキチガイじみた大作を直に見られることを考えると、むしろ1300円は安いのかも。
にしても、なんで小中学校の歴史の授業で伊藤若冲という日本画家のことを教えてくれなかったですか? ぶっちゃけ、藤原なんとかが娘を天皇に嫁がせたとか、徳川なんとかが犬を大事にしたとか、あるいは、わらじを懐で温めると出世できるとか、そういう話は今になって思い起こすとすべからくどうでもいい。若冲や芦雪の作品のほうが、よっぽど歴史の授業で学びがいがあったであろうネタだ(美術の授業では絵を描くものだ)。まあ、教師が教えたいことと教えられることしか学ぶ機会がないのが小中学校だから、どうしようもないって言ってしまうとそれまでなんだけど。
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