コダクローム(Kodachrome)というリバーサルフィルムがあります。というか、ありました。Kodak社ではコダクロームの製造を2009年6月22日に終了しています。だからいまはもう手に入らない。
製造中止そのものは、一部のファンには悲しいことだったのだろうけど、まあオールドメディアの終焉の一幕に過ぎません。コダクロームの本当の終了は、世界で最後の現像所が取り扱いを停止した2010年12月30日でした。これが「本当の終了」だったのは、コダクロームが自家現像のできないフィルムだからです。
現代のふつうのカラーフィルムは、フィルムそのものが発色の機能を備えています。だから、所定の薬品を使って一定の手順を踏めば、撮影した画像をカラーで取り出せます。そのへんの現像所はもちろん、おうちの台所でも現像ができるということです。ところがコダクロームは、フィルムそのものには発色の機能がなく、現像の過程で何段階か露光させることにより発色させるという特殊な方式でした(耳知識)。そのため、家庭はもちろん、そのへんの現像所でもコダクロームの現像はできません。だから2010年12月30日を最後に、それまで世界中で販売された未現像のコダクロームはただのゴミになってしまいました。ある種のDRMのようなものですね。人類はちっとも学習しない。
そんなゴミが、我が家からも一本発掘されました。とはいえ、古いカメラの中に入っていた撮影済みのフィルムを取り出したらコダクロームだった!という事情なので、個人的には安易にゴミ認定しかねます(どうせスナップではあるのですが)。必死になって調べてみたところ、どうやら英語圏では白黒ネガフィルムとしての自家現像にチャレンジしている人たちがいるようです。
というわけで、さっそく試してみます。
プロセスは "Kodachrome in 2011 – Process as Black and White" というサイトのものを参考にしました。参考というより、まるまる利用。現像マニアというわけではないので、その程度が限界です。以下はあくまでも素人による結果報告なので、もし参考にされる場合は、撮影画像が抜けてしまう覚悟でお願いします。
- 水洗い
- 水道水(30°C だった)で攪拌しながら 3分。排水はかなり黄色くなります。
- T-Max現像液で現像
- 標準希釈(1:4)、20°C で計 6分30秒。最初の 3分間を連続攪拌、50秒停止→10秒攪拌を 3セット。排水に 30秒
- コダフィックスソリューションで定着
- 標準希釈(1:7)、28°C で計 8分。最初の1分を連続攪拌、50秒停止→10秒攪拌を6セット、30秒停止→排水30秒
- 水洗い
- 20°C の水で2分程度の攪拌後、水道水(30°C だった)からの流水で 15分
- こそぐ
- ちょっと何を言ってるのか分からないかもしれないが、アクリルたわしで感光剤のない面(つるつるのほう)をこすり、黒ずみのようなものをこそいだ。フィルムワイパーかければ取れるのかなと思ったら、けっこうしっかり付いてるので、感光剤を傷つけないように注意しながら、けっこうしっかり黒ずみをおとしてやる。勇気がいる。
- ナニワカラーキットNの漂白定着液で処理
- 上記サイトによるとC-41の漂白をしたほうがヌケがよくなる、ということなので、いちおうやっておく。標準希釈で 1分攪拌し、すぐ排水。
- ドライウェル
- 上記サイトではフォトフローを使っているけど、そんなものヨドバシカメラに売ってない
- 乾燥
- 子供が留守のあいだに
結果です。EPSON GT-X800 でスキャンしただけの状態。ソフトウェアでは手を加えていません。長いことカメラに入りっぱなしなのを考慮して、もっと現像時の水温を下げるべきだったと後悔してますが、何が映ってるかは判明したのですっきりしました。
出来上がりについては、わたしの現像が未熟なのをおいておいても、残念な感じだと思いました(ところどころある白点は、こそぎ切れかなった黒ずみと思われ)。今回のような事情でもない限り、わざわざ余っているコダクロームを使ってモノクロ撮影をするようなものでもなさそう。
最後にいいわけっぽく、このコダクロームが眠っていたオリンパスのペンFというカメラと、同じカメラによるT-MAX100による自家現像作例も張り付けておきます。10年以上前の香港のようすです。
なんてすてきなレンズ!